2024-04-26
1. 増加するJ-REITの自己投資口取得
J-REIT価格は2月から3月中旬まで大幅に下落していたため、投資口(株式に相当)の取得を公表する銘柄が増えている。2023年は3銘柄であったが、2024年は、1月にアクティビア・プロパティーズ投資法人、2月にジャパンエクセレント投資法人、3月にKDX不動産投資法人、4月にラサールロジポート投資法人、大和ハウスリート投資法人、日本都市ファンド投資法人の6銘柄が既に公表している。6銘柄ともに決算と併せて公表したかたちだ。
J-REITの自己投資口取得は消却と併せて実施される。従って投資口取得分の発行済投資口が減少し、分配金の引き上げ効果が生じる。また運用側から現状の価格が割安過ぎるというアナウンスメント効果は有りそうだ。
2. 実質的な効果は限定的
J-REITで3銘柄を傘下に持つ三井不動産(8801)は、4月12日に新たに長期計画を公表し、株主への利益還元を強化する方針を公表した。具体的には配当性向の引き上げと自社株買いを併せ、当期純利益に対する総還元性向を50%以上に強化するというものであった。この公表を受けて三井不動産の株価は12日に大幅に上昇した。
しかし前述したJ-REITの投資口取得の公表による価格上昇は起きていない。この理由は、J-REITでは実質的に配当性向が100%であり、上昇の余地がないことが影響している。
三井不動産が公表した自社株買いは発行済株式数の1%強程度であり、J-REITの投資口取得と比率としては違いが少ない。しかし配当性向の引き上げで、投資家の利益還元強化が投資家に評価されたかたちだ。
J-REITの投資口取得はアナウンスメント効果だけであり、24年に公表済の6銘柄は業績予想への影響を加味していない。投資口価格変動によって取得する投資口数が変動する点も影響しているが、投資口数の減少率が小さいことが大きく影響している。つまり配当性向100%のJ-REITにおいて、投資家の利益還元は投資口取得を行っても投資口減少率が低いため、分配金への実質的な効果は極めて限定的となっている。
3. 運用側は有効な資金活用を検討すべき
J-REITは資産規模を拡大するために、上場企業と比較すると増資を頻繁に行う必要がある。例えば三井不動産が2014年に行った増資は32年ぶりであったが、資産規模拡大を進めている傘下の三井不動産ロジスティクスパーク投資法人は、2020年から2023年の直近3年だけで4回も増資を行っている。つまりJ-REITは事業会社と比較して増資により投資口数が頻繁に増加していく仕組みになっている。言い換えれば、自己投資口の取得はその後の増資で投資口が増加するという「矛盾」する動きとも言えるのだ。
自己投資口の取得は、価格上昇の要因となりにくいため、運用側はその資金の有効活用を検討すべきと考えられる。
例えば借入金の返済は今後有効になる可能性が高い。これまでは極めて低い金利水準で資金調達を行うことが出来たため、余剰資金の有効活用とは言えない状態であった。しかし日銀が利上げの可能性を示唆している中では、自己投資口取得よりも有効となりそうだ。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
1 | サムティ・レジ | +1.45% |
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2 | いちごホテル | +0.75% |
3 | 日本ホテル&レジデンシャル | +0.71% |
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