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マーケットコラム

J-REIT価格反騰の要因とは/アイビー総研 関 大介

2022-04-05

関 大介

1. 直近のJ-REIT価格動向

3月中旬以降J-REIT価格は上昇基調で推移している。東証REIT指数は3月30日に終値としては1月14日以来となる2,000ポイント台を回復した。株式市場も日経平均株価が3月8日に25,000円を割り込んだ後、3月23日には28,000円を超えるなど大幅に回復している。
J-REIT価格は、図表1の通り株式市場と同様の値動きを示しており、ロシアのウクラナ侵攻によるリスクオフの動きが緩和された影響が考えられる。
但し、株式市場は為替相場が円安という追い風が加わっている側面がある。一方でJ-REITは保有する大半の保有不動産が日本国内に所在しているため、円安の恩恵を受けることが出来ない。
更に2021年末からJ-REIT価格下落要因となっていた米国の長期金利は上昇が続いている。米国10年債利回りはウクライナ侵攻で一時的に低下していたが、3月13日に2.0%台を回復し、21日には2.3%を超える水準まで上昇している。


2. 価格上昇要因は長短金利のフラット化

従って、J-REIT価格は株式市場と比較すれば価格上昇率が大幅に劣後しているはずであり、長期金利の上昇を考慮すれば下落も想定できる状態となっている。
この状況下でJ-REIT価格が反騰している要因として、長短金利差のフラット化が考えられる。
米国のFBR(連邦準備制度理事会)は、3月に0.25%の利上げを行った。また今後も継続する方針を示しているが、対象は短期金利である政策金利(FF金利)となっているが、長期金利は通常では短期金利の上昇幅と同程度の上昇を示すことが多い。
しかし市場は急速な金融政策正常化に伴う景気悪化懸念も強めている。FBRが景気動向よりもインフレ抑制に積極的な姿勢となっているためだ。
市場は景気悪化リスクを織込み、短期金利と比較して長期金利の上昇幅は少ない。具体的には、償還期間が短くFF金利の影響を受けやすい米国2年債利回りは、22年初の0.78%から3月末には2.28%まで上昇。一方で米国10年債利回りは、1.63%から2.32%の上昇に留まっている。これにより図表2の通り、長期金利と短期金利の差異(いわゆるイールドスプレッド)が小さくなり、長短金利差のフラット化が進行している。
前述の通り、21年末からのJ-REIT価格下落要因が、米国の金融正常化によって長期金利の上昇が続くことを懸念していたものだとすれば、長短金利のフラット化はその懸念を一定程度解消しているものになっている。端的に言えば、J-REIT価格が急落した1月下旬の想定よりも長期金利の上昇幅を抑えられると考える投資家が増えたため、前号で記載した「楽観的なシナリオ」によりJ-REIT価格が上昇している要因となっている可能性がありそうだ。

更に外資系ファンドのJ-REIT運用会社株式の取得も、J-REIT市場に対し投資家の関心を高めた可能性がある。外資系ファンドのKKRは3月17日に日本都市ファンド投資法人(証券コード8953)と産業ファンド投資法人(証券3249)を運用する運用会社の株式を2,300億円程度で取得することを公表している。
次号でKKRの買収のメリットや2銘柄への影響について記載する予定としている。

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