FISCO REIT REPORT
1. 概要
平和不動産リート投資法人は、平和不動産グループの投資法人であり、東京都区部を中心とする、オフィス・レジデンス複合型REITだ。2002年1月に前身であるクレッシェンド投資法人を設立後、2005年3月には東証不動産投資信託証券(J-REIT)市場に新規上場、2010年10月にはジャパン・シングルレジデンス投資法人と合併し、名称を平和不動産リート投資法人に変更した上で今日に至っている。
また、投資主より募集した資金を主として不動産等に対する投資として運用することを目的とし、「運用資産の着実な成長」と「中期的な安定収益の確保」を資産運用の基本方針(基本理念)として掲げている。実際の資産運用はすべて、平和不動産アセットマネジメント(株)に委託しており、資産運用については、平和不動産のグループから様々なサポートを得られるのが大きな強みである。
同REITは、後述する「戦略的なポートフォリオの構築」、「平和不動産の強力なスポンサーシップ」、「分配金安定化ツールの活用」等の特長・優位性を有している。
2. 戦略的なポートフォリオの構築
同REITは、高い需要に支えられた「東京都区部を中心とする投資エリアに存するオフィス及びレジデンス」に集中的に投資している点に大きな特長がある。物件やエリアなどで戦略的にポートフォリオの分散を図っていることが、安定した稼働率と収益の源泉になっている。
まず、オフィスビルの分野では、東京都区部には主なテナント層である中小規模の事業所数が多く、豊富な需要がある。ただ、オフィスビルのすべてが安定収益を確保できるとは限らず、立地条件、建物スペック等の要素において、オフィスビルの中でも淘汰される物件とそうでない物件に“二極化”が進むと予想される。したがって、数多くの投資機会の中から、中長期的な収益安定性を有すると考えられる優良なオフィスビルを厳選して取得することを目指している。
実際、総務省統計局「平成28年経済センサス」データによれば、全国事業所数のうち、同REITの投資対象エリアに属する都道府県に立地するオフィス数の割合は57.6%に達しており、同REITがオフィス需要の強い地域に効率よく投資エリアを絞っていると言える。また、同データによれば、全国の総事業所に占める従業員50名未満の事業所の割合は96.9%にも達し、投資対象エリアの主要都市において中小型サイズのオフィス需要が非常に強いことがわかる。さらに、(株)ザイマックス不動産総合研究所のデータによれば、東京23区における築20年未満の中小型オフィス(107万坪)はオフィス全体(1,281万坪)の8.35%に過ぎず、中小型オフィスの希少性が高い。また2018年から2020年にかけてオフィスの大量供給が見込まれるが、その大半は大規模物件によるものである。加えて、三幸エステート(株)・(株)ニッセイ基礎研究所のデータによれば、都心の中小型オフィスビルは大規模物件に比べて景気後退期においても相対的に賃料下落幅が小さく、賃料のダウンサイドリスクが小さいことが示されている。
次に、居住用マンションの分野でも、東京都では人口増加傾向が続いており、堅調な需要が見込まれている。昨今の都心回帰への意識の高まり等により、単身世帯からシニア世帯まであらゆる世帯層が都心部への移住を希望していると考えられ、加えて不動産価格の高額化とも相まって都心部の賃貸住宅に関する需要は今後も堅調に推移していくものと思われる。ただ、レジデンスは、各種設備の機能的陳腐化がオフィスビルよりも早いので、新築物件を主として、極力築年数の浅い物件を集中的に取得することを目指している。
現在の日本は人口減少期に突入しているが、一方で総務省統計局データによれば同REITが投資対象とする主要都道府県では人口増加が続いている。また、国立社会保障・人口問題研究所のデータによると、2015年−2025年の10年間に都市部の世帯数は増加の見込みであり、特に東京経済圏・名古屋経済圏での世帯数増加は他のエリアを大きく引き離している。同データによれば、世帯の形の変化によって世帯の少人数化が進展することで、今後はシングル・コンパクトタイプの住居を必要とする世帯数が増加していくと読み取れる。同REITでは、ファミリータイプよりもシングル・コンパクトタイプの住居を数多く投資することで、同規模の建物からより多くの賃料収入を得ることが可能な、効率的な運営を図っている。/p>
2018年12月14日時点におけるポートフォリオの用途別内訳を見ると、オフィス43.2%、レジデンス56.8%になっている。厳格な投資基準に基づき、多数の物件へ投資することにより、用途・棟数・テナントの分散を行い、ポートフォリオの収益変動リスクの極小化を図っている。すなわち、オフィス及びレジデンス各々の投資メリットを効率的に享受するため、原則としてそれぞれポートフォリオの50%(取得価格ベース)を目途としている。オフィス賃料は景気感応度が高く、収益の変動性が高いのに対し、レジデンス賃料は景気変動を受けにくく、収益の安定性が高いことから、両方にバランスよく投資することで、収益性と安定性の双方を追求できるポートフォリオを構築している。
また、投資エリア別では都心5区44.6%、その他の東京23区26.3%、東京都周辺9.9%、その他地域19.3%となっている。地域的には第1投資エリア(東京23区)を主たる投資地域と位置付けるが、各エリアのマーケット状況(取得物件のストック量、取引価格の状況及び賃貸マーケット状況等)を勘案しながら、第2投資エリア(23区以外の東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)及び地方投資エリア(政令指定都市を始めとする全国の主要都市、すなわち平和不動産のサポートが得られる地方大都市)にも投資する。
3. 平和不動産の強力なスポンサーシップ
次に、同REITは、平和不動産の経験とノウハウを最大限に活用できることが特長であり、大きな強みと言える。平和不動産は東京、大阪、名古屋、福岡の証券取引所を賃貸し、全国各地にオフィスビルを所有するほか、不動産開発、宅地分譲やマンション分譲、ショッピングセンターなどのデベロッパー事業も幅広く展開している。
そこで、同REITに対する外部成長サポートとして、平和不動産の保有・開発物件、仲介物件、先行取得物件等の情報ソースを活用できる。実際、スポンサー変更後の物件取得合計は、2018年12月末で34件/70,714百万円であるが、うち平和不動産のサポートによるものは25件/54,741百万円で全体の73%/77%を占めており、スポンサーのサポートが、同REIT成長の原動力となっていることが実績として示されている。
また、内部成長サポートとして、情報の共有化によって稼働率の改善を図ることができる。さらに、財務サポートとして、財務方針、資金調達等のかかる支援や指導を仰ぐこともできる。同REITでは、こうしたサポートを最大限に活用し、着実な成長戦略を推進することによって、更なる投資主価値の最大化を目指している。
一方、デベロッパーの平和不動産にとっても、REITの仕組みを活用して資金調達が可能となるメリットが大きいと考えられる。
4. 分配金安定化ツールの活用
さらに、同REITでは、2018年11月期末に、一時差異等調整積立金残高等の内部留保残高4,490百万円、繰越欠損金残高264百万円を有することが、将来の安定的な分配金支払いを可能にする。すなわち、一時差異等調整積立金残高は過年度に計上した負ののれん発生益を積み立て、翌期以降50年以内に毎期均等額以上を取り崩すことが可能な任意積立金であり、物件売却に伴い減損損失を計上した際にも、内部留保の取り崩しによって実力ベースの分配金支払いが可能である。また、現在の繰越欠損金残高の期限は2020年5月期までではあるが、繰越欠損金により売却益を相殺することで内部留保を蓄え、将来の分配金に充当することができる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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