キャップレートをはじめとする不動産市場の指標を、J-REITのデータからの定量的分析によりご報告します。
こうした有用性の一方で、かつてのキャップレート情報は広く公開されておらず、若しくはある取引価格を正当化するために恣意的に決定されるといったこともあり、不動産投資市場をより不透明で分かりにくいものにもしていました。
この状況に変化が生じたのが、2001年のJ-REIT市場の発足です。充実した監査・開示制度によりJ-REITがより公正な取引で取得した物件のキャップレート情報が広く世の中に公開されることになったのです。
神崎氏は、2001年5月以来のJ-REITの不動産取引3,400余件のデータを基に、オフィスやレジデンス、商業施設、ホテル、倉庫、ショッピングセンターについてより信頼性の高いキャップレートを時系列で把握することを可能としました。
では、J-REITを中心として膨大な不動産取引データと向き合ってきた神崎氏は、2017年上半期の不動産投資市場等をどのように見ているのでしょうか。
まず世界経済という大枠については、足元の景気は好調な米国、勢いは緩やかなものの底堅い景気の欧州に支えられて安定はしているものの、今後は中国の不動産バブルをソフトランディングさせられるか否かが大きな問題として浮上してきそうです。
日本経済については、米国の利上げの動きが日銀にも波及するか話題になっていますが、神崎氏は、潜在成長率が低水準な限り金利の上昇があっても緩やかで、市場が混乱なく織り込める水準に留まるという見立てを示しました。
こうした経済環境を踏まえて不動産投資市場を見ると、全体として需要の強い状態は続いており、特にレジデンスとホテルの強さが目立つようです。一方で神崎氏はJ-REITの不動産売買状況から取引件数に占める売却の割合が2001年以来で過去3番目の高さに到達していることを指摘し、今を「売り時」と考えている投資法人が増えているのではないかとの見方を示しました。そしてオフィスとレジデンスの2001年5月以来のキャップレート推移を表示し、現在のキャップレート水準が過去で1、2位を争う低さであり、低さの継続期間が過去に類を見ない長さとなっていることから、キャップレートが反転上昇に生じた場合(=不動産取引価格が下落に転じた場合)の影響の大きさに注意を促しました。
最後は神崎氏が弊社と協力して立ち上げたサービス「Capree」の説明を行いました。大量のキャップレート・データを容易に利用、把握できる当該サービス自体に加え、そこで取得したキャップレートデータを利用し、各J-REITの物件取得の巧拙を比較して浮かび上がらせるといったデータの活用方法に、出席者も熱心に耳を傾け、質疑応答の時間も含めて所定の時間をややオーバーしてしまうほどの盛り上がりを見せて当日のセミナーは幕を下ろしました。
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1 | 新宿三井ビルディング | 1,700億円 |
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2 | 飯田橋グラン・ブルーム | 1,389億円 |
3 | 六本木ヒルズ森タワー | 1,154億円 |
4 | 汐留ビルディング | 1,069億円 |
5 | 東京汐留ビルディング | 825億円 |
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