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2015年10月21日

日本ロジスティクスファンド投資法人の投資判断を行う上での留意点

マーケットレポート

今回は、2015年7月期(第20期)の決算を発表した日本ロジスティクスファンド投資法人(証券コード8967、以下JLF)の投資判断を行う上でポイントとなる点について記載します。

1.日本ロジスティクスファンド投資法人の「逆張り投資」とは?

JLFは、三井物産をスポンサーとする2005年に上場した最初の物流施設特化銘柄です。現在、物流施設に特化して投資を行う銘柄は3銘柄ですが、2番目に上場したGLP投資法人(証券コード3281、以下GLPJ)は2012年12月上場、3番目に上場した日本プロロジスリート投資法人(証券コード3283、以下NPR)は2013年2月上場ですので、JLFはかなり早い段階で上場し、第20期決算ということが示す通り運用実績が10年を超える銘柄です。

JLFに対する投資判断の上で最も重要と考えられる点は、JLFの物件取得方針である「逆張り投資」に対する評価です。第20期決算説明会資料(※1)のP11に記載されている通り、他社が買う前や買えない時に買い、取得競争が過熱する中では慎重な投資を行い資金調達余力と確保するという投資方針です。

2.資産拡大ペースによって異なるテナント退去リスクと含み損発生リスク

このような投資方針であるため、JLFは資産規模の拡大が緩やかです。JLFの上場時資産規模260億円弱から2015年10月1日時点で2,126億円となっています。つまりJLFは10年以上をかけて1,900億円弱の不動産を取得したことになります(※2)。 一方で、GLPJとNPRの資産規模は上場時から4年弱でGLPJが1,754億円増加し3,841億円、NPRは2,320億円増加し4,050億円となっています。
さらにJLFは現在の物流不動産価格が高騰していると考えているため、今後の物件取得ペースは鈍化することになりそうです。 従って、JLFはJ-REIT投資を行う上で時価総額を極めて重視する投資家には向かない銘柄と考えられます。2015年9月末時点の時価総額はJLF1,887億円、GLPJ2,969億円、NPR3,759億円となっていますが、GLPJとNPRは今後も物件取得を積極的に行う方針を示しているため、時価総額の差異は更に拡大することになる可能性が高いためです。
またテナント分散効果を重視する投資家の場合は、慎重な判断が必要となりそうです。シングルテナントとなっている物件も多い物流施設は、資産規模がテナント分散効果を示すことが多いためです。
但し、JLFは資料P16に記載されている通り、テナントの契約満期を分散することで、退去リスクを限定的にしています。
さらに物件価格が高騰している時期に取得した比率が高くなると、将来それらの物件が含み損失を発生させる可能性が高くなります。
J-REITでは、リーマンショック後に含み損失拡大による借入金比率上昇によって損失を出しながらも物件売却に追い込まれる銘柄もありました。
つまりテナント退去リスクは、含み損発生リスクと天秤にかける必要があるのです。

3.予想分配金利回りと分配金水準

一方で、「逆張り投資」を評価する投資家であれば、9月末時点でJLFの予想分配金利回りが3.72%と市場平均の3.57%を上回る状態になっているため、JLFの投資妙味は高いものと考えられます。
図表の通り、JLFの利回りは市場平均と比較して低い状態が通例であり、図表の期間平均は0.13%と低いものであったためです。JLFの利回りが足許で高くなっている要因は、市場価格が急落した9月初旬に増資を公表したため需給が弱含みとなっていることにありそうです。
さらにJLFはJ-REIT市場で数少ない1口当たり分配金の「増加傾向の継続」と「最も高い水準」を両立している銘柄です。このように高い分配金を投資家に還元できる要因は、スポンサーに過度に依存しない運用姿勢を堅持していることが大きな要因になっているものと考えられます。

4.逆張り投資の効果

このことが、前述の逆張り投資姿勢を維持することに繋がり、結果として業界最大の30%近い含み益をもたらしています。
また多くの銘柄が物件の再開発を行う際には、スポンサーや建設会社に物件を売却し再建築後に再度物件を取得している点とは異なり、JLFは保有したままで再開発(このことをJLFは「OBR」と呼称している)を行っています。
このOBRも含み益拡大に繋がるだけでなく分配金の増加にも寄与しています。

※1:2015年9月28日付「日本ロジスティクスファンド投資法人 2015年7月期 決算説明会資料
※2:物件再開発による増加分及び売却による減少分を含む

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