REIT注目記事
【対談】女性IR担当者が語る、住宅REITと物流REITの安定性の魅力
~コンフォリア・レジデンシャル投資法人×日本ロジスティクスファンド投資法人~
Section 2.安定性が再評価される住宅REITと物流REIT
住宅REITの安定性 ―賃料の下方硬直性と住宅REITの高い分散効果―
(宮脇)賃貸住宅が安定している理由として、まず賃料の下方硬直性が挙げられます。賃貸住宅の賃料は、一般的に景気や資産価格の変動の影響を受けにくいため、オフィスの賃料と比べて、相対的に賃料水準の変動幅が小さいという特徴があります。住宅賃料とオフィス賃料の長期的推移を見ても、住宅の賃料は安定的であることがわかります。
(金子)確かに最近コロナ禍においても、企業業績の悪化によりオフィス賃料の減額や商業施設賃料の一時的な免除の話はニュース等で見聞きますが、賃貸住宅の家賃に関する話はあまり聞かないですね。
(宮脇)そうですね。景気変動により業績が悪化する企業は、収益性を改善させるためにまず固定費である店舗やオフィス賃料の値下げ交渉をしたり、場合によっては解約したりするケースもあるため、商業・オフィス賃料等は景気変動の影響を受けやすいと言えます。
一方、賃貸住宅の場合、賃料の原資は基本的に従業員の賃金を基礎としており、賃金は企業業績ほど景気に左右されるわけではないので、原資である賃金が下がらない限り、賃料負担力もそれほど変動することがないというのがポイントです。
(金子)近年は女性活躍によって共働き世帯が増加していることもあり、テナントの賃料負担力もその分高まってきていると思います。また、住宅はそもそも「1世帯に1つ必要なもの」であり、人々が生活して行く上で必要不可欠なものですし、需要が一気に減少して、それに伴って賃料が急激に下落することは想定しづらいですね。
(宮脇)その通りです。さらに、住宅REITの特徴としては、「分散が効いている」ということがあります。例えば、コンフォリアは133物件を保有しおり、1万戸弱のテナントがおられます。
(金子)日本ロジは、約70テナントですので、140倍。コンフォリアと日本ロジは資産規模(保有している物件の取得金額の合計)が同じくらいですが、こんなに差があるのですね。
(宮脇)約1万戸あると、契約締結時期も分散しているので、一度に大量の空室や大幅な賃料減額が発生して、収益性が急激に悪化するリスクは相対的に低くなっています。コロナ禍においても、2020年4月末時点のポートフォリオ稼働率が95.9%で依然として安定しています。
(金子)テナントが多いことで解約リスクを平準化させられることのメリットは大きいですね。日本ロジは、テナントが少ないので、賃貸借期間の満了日をずらして分散させたり、早めに契約更改の交渉を進めたり常に工夫しています。
(宮脇)賃貸住宅や物流施設はどちらも安定性が高いアセットタイプと言われていますが、アセットタイプが違うと安定性のポイントも違いますよね。
物流REITの安定性 ―ネット通販の拡大による堅調な需要と長期で安定した賃貸借契約―
(金子)物流施設も相対的に景気の影響を受けにくいと言われています。物流施設はモノを届ける物流サービスで利用されており、みなさんの社会生活や企業活動を支える社会基盤として重要な役割を果たしています。モノを届けるサービスは景気動向に左右されず必要とされるため、物流施設の賃貸需要も相対的に安定していると考えられます。
(宮脇)物流施設は、あまり身近ではお見かけしないのですが、具体的にどのような使われ方をしていますか。
(金子)例えば、Amazonさんなどのネット通販事業者が使用しています。みなさんがインターネットで買い物をすると、ネット通販事業者は物流施設内に保管している荷物のなかから注文された商品を集め梱包して発送します。
(宮脇)なるほど、物流施設がまるでショッピングセンターのような存在で、私たちはインターネットを通じて物流施設にある商品を購入しているのですね。
(金子)また、小売店等を展開する企業も物流施設を使用しています。工場で生産された食料品や日用品は物流施設に一旦保管され、全国各地のスーパーマーケット等の小売店に届けられています。その他にも、海外から輸入した原材料を物流施設に保管して必要なときに工場へ出荷したり、工場で製造した製品を物流施設に保管してから全国や海外に出荷したり、あらゆるモノを届ける拠点として物流施設は必要とされています。
(宮脇)大勢の人々に効率よくモノを届けるには一旦集約してから一斉に運ぶことが必要で、物流施設はその役割を担っているのですね。
コロナ禍の混乱でスーパーマーケットの商品が欠品した際は不安になりました。必要なものを欲しいときに買えないことが人々に不安と混乱を引き起こしてしまうことを実感し、改めて物流サービスの大切さを感じました。
(金子)企業は緊急事態下でもモノを滞りなく届けることを強く意識しています。そのため、今後テナントとなる企業が在庫を増やす動きもあり、賃貸需要は依然強いです。また、ネット通販の市場拡大も物流施設の賃貸需要を後押ししています。
(宮脇)グラフを見ると年々ネット通販の利用率は増えていますね。外出自粛により”巣ごもり消費”というキーワードが注目されていますが、私もまさにネット通販のヘビーユーザーで、何でも買えてすぐに届くから本当に助かっています。今後もネット通販の利用率はさらに高まりそうですね。
(金子)そうですね、ネット通販の利用率はアメリカや中国、イギリスなどは10%を超える水準ですが、日本はまだ6%程度ですので、巣ごもり消費も追い風となって今後さらにネット通販の市場が拡大することが期待できると考えています。
また、物流施設の賃貸借契約は長期間の固定賃料での契約が多く、賃料収入の基盤が安定しています。物流施設の賃貸借契約期間は3年から5年程度、長いものでは10年超あります。
(宮脇)賃貸住宅の契約期間は2年が原則ですし、オフィスも2年程度と考えると、10年間にわたって固定賃料が支払われるというのは将来的に収入が約束されているので、収入基盤が安定しているというのは納得です。