野村不動産系3銘柄合併による投資家のデメリット/アイビー総研 関 大介
今回は、野村不動産系3銘柄が合併することで誕生する野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3462、以下新NMF)の投資家から見たデメリットについて記載していきます。前回の連載では、合併による投資家のメリットとして、規模拡大で大型物件の取得が行いやすくなる点や継続的な物件取得が可能になる点を記載しました。
1. 合併による2つのデメリットとは?
一方で、合併により投資家が留意しておくべきデメリットも存在します。
最大のデメリットは、不動産価格が高騰しているこの時期の合併となったという点です。
新NMFは、会計上は野村不動産マスターファンド投資法人(証券コード3285、以下NMF)が、野村不動産オフィスファンド投資法人(証券コード8959、以下NOF)、野村不動産レジデンシャル投資法人(証券コード3240、以下NRF)を吸収合併するかたちになっています。
従って新NMFは、NMFが保有していた取得額2,556億円から、合併時にNOF、NRFの保有不動産5,235億円(※1)を取得することになります。つまりNMFの資産規模に対し2倍以上の不動産を取得することになるのです。
さらに合併後に、新NMFは取得額で231億円の不動産を取得する予定となっています。
従ってポートフォリオに対し10月以降取得物件の比率が70%程度を占めることになります。
長期的に見て現在の不動産価格が高騰期と考える投資家から見れば、将来的に含み損に転じる可能性が高いポートフォリオと言えるのです。
2点目のデメリットとして、新NMFは合併により1口当たり出資額が高くなることが挙げられます。
具体的には1口当たり出資額が、NMFの97,000円弱から128,000円弱まで上昇(※2)することになります。
従っNMFと比較すると、新NMFは1口当たり出資額を上回る価格で増資を行うプレミアム増資のハードルが高くなります。
不動産価格が高騰し物件の取得利回りが低下している現状では、プレミアム増資効果が発揮できない状態になると、増資後の分配金を増加させることが難しくなります。
つまりNMFの頃であれば、投資家が享受できたプレミアム増資効果は、この合併によって奪われたかたちになっているのです。
2. 新・「野村不動産マスターファンド投資法人」の評価
このようにメリット・デメリットをまとめると、分配金の安定性は増すことになりましたが、分配金を増加させることが難しくなったと考えられます。
また規模拡大の余地は大きくなりましたが、この時期に購入した不動産のポートフォリオ比率が高くなる点については、投資家の不動産価格動向に対する見方によって評価が分かれるものとなりそうです。
将来的に見れば、現状の不動産価格は高値と見る投資家であれば、リスクが高い合併という評価となります。
一方で、まだ不動産価格の上昇の余地があり、その傾向が5年以上は続くとみる投資家であれば、規模拡大を短期で実行できたという点でリスクが低い合併という評価になりそうです。
※1:「合併説明会資料」2015年5月27日に拠る。
※2:上記※1資料に拠る合併比率に基づき5月26日終値をベースに筆者試算。
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