2011年03月25日

地盤の液状化現象/REITアナリスト 山崎成人

 東日本大震災により千葉県浦安地区の一部で地盤の液状化現象が起こっているようです。
私は阪神大震災の時、神戸のポートアイランドでの地盤液状化を見ましたが、埋立地でもあるこういう場所の地盤の脆さを体験しました。

液状化は土中の水分が放出されることで、地盤のレベルが変化し、所謂、不陸が生じます。
建物に対する被害としてはいつくかありますが、先ず、設備配管の断裂が挙げられます。
建物内の配管は、建物躯体に取り付けられていますから、同じ振動となるので、ジョイント部分での断裂はないと思いますが、建物から出た配管と外構配管との繫ぎ目が断裂する場合があります。
地震対策として、ここにフレキシブルジョイントを使っている場合もあり、これによって断裂を防げることもありますが、液状化では外構配管及び公共配管との繫ぎ目が断裂します。
神戸のポートアイランドで建物を建築した際に、地震対策について色々と検討しましたが、外構配管についての技術部門からの提案は、配管下の地盤をミルクセメント注入によって固める、または基礎を打って支えるというものでした。
後者は支持地盤が20M以上になっているので論外になりましたが、ミルクセメント注入には興味があったものの、効果は限定的なのとやはりコスト面から見送りになりました。
地盤液状化は建物建築の際にも主要な検討事項になり、新潟地震のデータから技術的なアプローチをしましたが、コストの問題によって、建物内部の対策に限定されました。
このような検討によって超高層マンションを建築しましたが、当時流行っていた柔構造を採用せず、SRCによる剛構造を採ったのも正解でした。(技術部門から住宅には柔構造は適さないという意見による)
但し、剛構造を採ると柱や梁が太くなるので、住戸間取りを考える際に、この事を考慮して設計を行わなくてはならず、これが大変でした。
このような仕事をしてから10年も経ないうちに阪神大震災が起き、今度はこの建物の管理の立場から復旧を行うことになりました。
建物建築に際して採られた措置は有効であり、建物躯体に何ら異常は認められませんでしたが、地盤の液状化だけは復旧の必要がありました。
外構配管は寸断され、公共配管との繫ぎ目も断裂していましたから、簡単には復旧しません。
処置としては、外構部分をすべて掘り返して新たに配管を行うことですが、公開空地もあった為に、かなりの面積を掘り返すことになりました。
またこの時に問題になったのは、費用と工事の手配でした。
神戸全域が被害に遭った為に、人手を集めるのが難しいのと、費用負担をどうするかが大きな問題でした。
費用についてはこの超高層マンションでは販売時にかなりの額の修繕積立金一時金を徴収していた為に、数億円の積立金がありましたので、ここからの支出で賄うことが出来ますが、これには管理組合総会での決議が必要となり、直ぐには間に合いません。
そこで、地震発生から2週間後に、売り主であった三菱地所が保証することで、工事業者を納得させて手配をしました。(実際は、副社長がゼネコンに口頭で約束する形を採りました)
その結果、神戸市内で最も早く復旧したマンションになったのと、後日、管理組合決議によって修繕積立金からの支出が決まりました。

どういう偶然か、建物建築に関わり、そして震災復旧にも関わることになり様々な経験をしましたが、こういう時には、素早く情報を収集し判断を一元化して決断を早くすることだと思います。(私の場合は協議は殆ど必要ありませんでした)
また、事前の検討内容はかなりストレートに結果に反映されるという事です。
多額の修繕積立金を有していたのも、販売時に思い切って増額したことによります。
一般的には、あまり負担の大きい金額では販売に影響が出るとして避けられますが、販売の責任も負っていた為に、これもすんなりと決められました。
この経験から天災は予測不可能ですが、決して無力ではないという事です。
勿論、被害を阻止することは出来ませんが、軽減したり復旧を早めることは可能です。
今回の地震では想定外の津波により大きな被害が出ましたが、今後は、これも考慮しながらの開発を進めて欲しいと思います。

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