2011年01月14日

増資の方法/REITアナリスト 山崎成人

1月11日に、日本ビルファンド投資法人が公募増資を発表しました。前回の増資が2008年2月でしたので、3年振りとなります。
前回の増資価格は1,205,400円/口でしたので、今回は前回の65%程度の価格になりそうです。
ブックビルディングによる増資では、過去の増資価格に拘ると増資が続かなくなりますので、止むを得ないとも言えますが、機関投資家のように保有投資口の平均コストで考えられる投資家は別としても、前回の増資で購入した個人投資家にとっては面白くはありません。
また、日本ビルファンド投資法人の予想配当金利回りは3.6%程度で、上場全銘柄平均の4.7%と比べると、1%以上低い利回りになりますから、個人投資家の意欲が低下し、投資主構成の個人投資家比率(前期は6.9%)が、更に縮小するのではないかと懸念されます。
このように考えると、前回増資価格を無視するのであれば、いっそのこと70万円台前半で増資して、予想配当利回りを4%台に引き上げるのも一つの方法ですが、そのような調節は現状では難しいと思います。

一方、金融庁が増資の方法を見直しているようで、株主割当増資を念頭に置いた制度を検討中とのことです。
この増資手法は、REITにとっては最も望ましい手法になると思いますので、なるべく早い時期に制度改変が実現し、今年後半から使えるようになれば、REITにとって朗報です。
過去に高い価格で増資した銘柄にとって、欧米でライツ・イシューと呼ばれるこの手法が可能となれば、過去の増資を一旦リセットして、将来はこの手法で増資を行うとすれば、既存投資主に対しても説明が付きそうです。
また、既存投資主を重視するようになれば、投資家は長期スタンスで銘柄判断をするようになりますから、今までのような見方とは変わると思います。
例えば、予想配当率だけでなく、過去の一定期間での実績配当率や配当金の変動率等も判断材料に加わります。
REITが誕生して10年経ち、実績がトラックレコードとして扱えるようになったと考えられますので、様々な意味でも、増資手法の見直しはREITにとって意義があります。是非、金融庁が早期に実現してくれることを願いたいと思います。


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