2010年10月29日

投資市場の発想転換/REITアナリスト 山崎成人

 日銀の資産取得が債券(国債・社債)だけでなく、リスク資産であるETF、REITまでを対象とする景気刺激策を打ち出したことが反響を呼んでいます。
尤も、ETFとREITの買取枠は0.5兆円程度とのことですから、時価総額から見て株式市場への影響はほとんどなさそうです。
一方、REITの時価総額は3兆円程度ですし、又、インカムゲイン投資のREITの市場浮動株は少ないですから、ある程度の効果は生じそうです。
本来、投入資金と効果との関連で見れば、REITへの投入に傾斜する可能性もありましたが、実際には買取枠の10%(500億円)になるようなので、もう少し増額してもよいのではとも思います。
冷静に考えれば、現在のREITは全銘柄平均で5.5%超/年の配当利回りを持っていますから、相対的投資リスクは小さくなります。
日銀は原則として保有するようですので、少なく見積もっても年5%以上のインカムゲインは確保出来ます。
また、東証REIT指数でみる投資口価格は、依然として920~930ポイント程度で推移しており、この先も大きく下落する要素がありませんから、日銀のように千億円単位を用意できる投資家であれば、REITはリスクよりもリターンの方が大きい投資商品だとも言えます。
更に言えば、社債に比べてもREITの破綻確率は小さくなっていて、現在のREITであれば4~5銘柄を除けば、破綻の可能性は無視出来るとも言えます。

このような視点で見れば純投資としても成り立つことになりますし、また今回の日銀のリスク資産買取を機会に日本の投資市場を考え直す契機になればと思います。
マスコミ等の論調は、株式市場の復活が景気上昇の鍵だとしていますが、既に成熟期に入った日本経済でキャピタルゲイン投資をメインにする方が不合理です。
投資市場をグローバルで見れば、キャピタルゲイン投資は成長期待のあるアジア株やBRICsで行うべきであり、逆に国内ではインカムゲイン投資にシフトするのが常識的です。
既に個人投資家はそのように動いていて、国内株式投資でキャピタルゲイン投資を求めるのは難しいと考えているはずです。
海外への投資をハイリスク・ハイリターンにしていますから、そのリスクを下支えするには国内のインカムゲイン投資だと考えるのも自然の流れです。
その意味では、国内のインカムゲイン投資市場の整備が必要となりますので、今回の日銀の資産取得が発端となって、インカムゲイン投資商品に注目が集まり、そしてその市場整備が進行すれば、長い目で見れば日本の投資市場の健全化に寄与すると言えます。
従って、何が何でも株式とする従来の発想からそろそろ離れる時期が来ているのではないかと思います。


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