賃貸市場の整備とレジデンスセクター/REITアナリスト 山崎成人
日本賃貸住宅管理協会が「めやす賃料表示制度」の導入を行い、借主が比較し易いようにして紛争防止と公平な競争を促すようにするとのことです。
賃貸市場の透明化と公平な競争はREITにとっても必要不可欠です。 REITは、稼働率や平均賃料を公表し、賃貸収支の内訳まで開示していますから、貸主としては最も透明化の進んだ主体ですが、テナントに対する働きかけは賃貸斡旋業者に頼っている為に、賃貸市場の整備にまでは至っていません。
元々、REITの保有物件は賃貸市場では質の高い物件ですから、本来は透明性を高めてテナントにアピールするべきなのです。
その為には、賃貸情報の出し方を整備して、比較し易いようにすることですが、更にはREIT間で協調して統一フォームを作成する事も必要になります。
やや古い話になりますが、昭和40年代の分譲マンション市場でも同じような状況がありました。各社がバラバラな形式で情報を出していた為に、購入者が比較することが出来ない状況が続いていました。
その頃、リクルートが「住宅情報」という雑誌を創刊したので、読者がそれぞれの物件を比較出来るようにすることを勧めました。そして、物件比較情報の項目を作り、どのベージにも共通して掲載するように提案しました。当時、リクルートは不動産の知識がありませんでしたから、これらのデータを作成して渡しました。
その後、この雑誌は隆盛を極めて分譲マンション市場の活性化に大きく寄与しましたが、このように情報の整理・整備は市場活性化には不可欠です。
REITのクライアントとは、投資家とテナントですから投資家に対する情報開示だけでなく、テナントに対しても同様に意を砕くべきです。
その為には、「めやす賃料」の表示だけでなく、敷金の返還規定も明確にすることも必要ですし、地域によって異なる慣行も平準化すべきです。
現在、REITのレジデンスセクターは今一つ元気はありませんが、こういう市場整備に向けて結束する事も必要だと思いますので、レジデンスセクターの最大銘柄であるアドバンス・レジデンス投資法人あたりが音頭を取ってREIT間の協調体制を構築出来ないものかと思います。
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