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決算情報拾い読み 産業ファンド投資法人
2023年7月期(第32期)決算説明資料
今回取り上げるのは、2023年9月13日に開示された産業ファンド投資法人(以下IIF)の32期(2023年7月期)決算資料です。
資産運用会社は、 2022年4月28日に三菱商事・ユービーエス・リアルティ株式会社から株式会社KJRマネジメントに変更された。
ポートフォリオ投資方針等
ポートフォリオ構築方針(有価証券報告書より抜粋)
第32期のトピックス
1.投資環境
不動産売買市場は、2023年4月に日本銀行総裁の交代後も従前と変わらず金融緩和政策の継続が示されたことから、良好な資金調達環境の下で、国内・海外投資家の投資意欲は引き続き高い状況にあり、厳しい取得環境が続いている。
一方で、2023年7月27日・28日に開催された金融政策決定会合を経て、日本銀行は長短金利操作(イールドカーブコントロール)の運用柔軟化を決定した。今回の決定内容は軽微であるものの、将来における金融緩和政策の修正と捉えることができ、金利上昇における資金調達環境の変化や本投資法人の調達コスト上昇などの影響を注視していく必要がある。 また、ウクライナ情勢を受けた資源価格高騰による物価上昇の影響等が、個人消費や企業業績の回復妨げの要因になるため、資本市場の変動とともに注視していく必要があると考える。
2. 外部成長
当期においては、公募増資の実施に伴い、5物件の取得を発表し、2023年3月23日付け でIIF滋賀竜王ロジスティクスセンター、IIF近江八幡ロジスティクスセンター及びIIF飯能マニュファクチュアリングセンター(底地)の3物件、2023年5月15日付けでIIF大田マニュファクチュアリングセンターの取得を し、2023年12月25日付けでIIF厚木ロジスティクスセンターⅢ(再開発)を取得する予定。また、IIF神戸ロ ジスティクスセンターについて、2023年4月7日付けで準共有持分割合3%、2023年7月31日付けで準共有持分割合 32%を譲渡し、不動産等売却益8.61億円を計上している。
これらの結果、本投資法人の当期末時点の保有資産は、78物件(物流施設48物件、工場・研究開発施設等24物件、インフラ施設6物件)、取得価格の合計は3,893.93億円となっている。
3. 内部成長
本投資法人は、テナントに対し価値を提供することにより、長期安定した運用+αとしての内部成長を実現するため「3C Management Cycle」によるポートフォリオ運用を継続している。
「3C Management Cycle」とは、
①Communicate:テナントとの密接なコミュニケーションによってニーズを的確に把握
②Customize: 個別のニーズに応じてカスタムメイドの提案を戦略的に実施する
③Create:ニーズの解決という 価値を創造すると同時に、長期運用+αという投資主価値を創造していく
というポートフォリオ運用の考え方である。
その成果として、IIF兵庫たつのロジスティクスセンターにおいて、既存テナントと照明設備のLED化による削減効果の共有(以下、「グリーンリース」という。)の覚書を締結し、またIIF新山下R&Dセンターにおいて、空調設備更新に伴うグリーンリースの覚書を締結し、環境負荷軽減策の実行と収益向上の両立を実現している。
さらに、現在、2023年12月25日取得予定のIIF厚木ロジスティクスセンターⅢ(再開発)及びIIF羽村ロジス ティクスセンターの再開発事業、IIF習志野ロジスティクスセンター(底地)にて現借地人であるリース会社 との協働によるオフバランス再開発も推進中。
このように今後も「3C Management Cycle」の取り組みによるポートフォリオの安定性の維持及び更なる収益性の向上を目指し、建物の機能性・安全性・快適性の維持・向上に必要な管理の実践と必要に応じた適切な修繕の実施、及び継続的かつ緊密なコミュニケーションを通じた賃借人との関係構築による賃料水準の維持・向上、解約の抑制に引き続き努めていく。
4. 資金調達の概要
エクイティファイナンス
本投資法人は、2023年3月に公募増資を公表し、新規物件取得のための資金調達を目的とした新投資口 43,500口の発行を行い、58.18億円の調達を行った。
この結果、当期末時点の発行済投資口の総口数は 2,113,516口となっている。
デットファイナンス
当期の有利子負債の調達については、新規物件の取得を目的として2023年5月15日に長期借入金及び短期借入金40億円(平均借入期間2.8年)を新規で借り入れた。 また2023年2月6日に長期借入金60億円(平均借入期間3.2年)、同年3月31日に長期借入金17億円(借入期間8年)、同年4月28日に長期借入金8億円(借入期間9年)、同年6月30日に長期借入金33億円(平均借入期間6年)をそれぞれ固定金利で新規に借り入れ、返済期限を迎える同額の長期借入金及び短期 借入金を返済しました。 これらの借換えを通じて、借入期間の長期固定化、金利コストの削減効果、及び将来的な財務施策の柔軟性確保等により、長期に安定的な分配金を確保できる財務体質を構築している。
2023年7月31日現在の有利子負債残高は 2123.83億円、うち、長期借入金は1,925.83億円(1年内返済予定の長期借入金を含む)、短期借入金50億円、投資法人債は 147億円となっている。
主要指標(決算説明資料より抜粋)