REIT注目記事
平和不動産リート投資法人
FISCO REIT REPORT
平和RE Research Memo(1):2021年5月期業績におけるコロナ禍の影響は限定的。「NEXT VISION」では投資口の流動性向上を推進
■要約
1. 東京都区部に集中投資、平和不動産のサポートが大きな強み
平和不動産リート投資法人は、平和不動産グループの投資法人であり、中小規模の事業所数が多く、人口増加傾向が続く東京都区部を中心に、オフィス及びレジデンスに集中的に投資する複合型REITだ。全国各地の証券取引所やオフィスビルを所有・賃貸し、日本橋兜町・茅場町の再活性化及び札幌再開発事業化を推進する再開発事業などのデベロッパー事業を幅広く展開する平和不動産の経験とノウハウを最大限に活用できることが、同REITの大きな強みである。
2. 2021年5月期の分配金は、11期連続でスポンサー変更後の最高値を更新、コロナ禍の影響は軽微
2021年5月期は、物件譲渡益の減少に伴い、営業収益6,730百万円(前期比4.8%減)、営業利益3,309百万円(同10.0%減)となったが、期初予想を上回る決算であった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響は限定的であり、外部成長戦略による物件の取得、内部成長戦略による既存レジデンスの稼働率上昇、財務運営による借入費用の減少などにより、譲渡益等の一時的要因を除く賃貸ベースの利益は拡大した。以上の結果、1口当たり分配金は期初予想通り2,800円(前期比120円増)とし、11期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した。着実な成長に加えて、内部留保残高54.8億円、フリーキャッシュ残高70.5億円を有することが、継続的な物件取得、財務基盤の安定化や、将来の安定的な分配金支払いを可能にしている。
3. 2021年11月期、2022年5月期も高水準の分配金を予想
2021年11月期の業績予想については、営業収益6,634百万円(前期比1.4%減)、営業利益3,087百万円(同6.7%減)を、また2022年5月期の業績予想については、営業収益6,706百万円(同1.1%増)、営業利益3,153百万円(同2.1%増)を予想している。2021年11月期予想の主因は、外部成長戦略として公募増資により取得した新規物件の収益寄与を見込むものの、物件譲渡益の減少の影響が上回ることによる。一方で、内部成長戦略として、新規取得物件の収益寄与を含め、賃貸収益の継続的な増加を見込む。また、財務戦略では、リファイナンスとともに金利費用の減少が公募増資に伴う借入金増加の費用を吸収する見通しだ。以上から、1口当たり当期純利益は減少するものの、潤沢な内部留保を取り崩すことで、2021年11月期の分配金は2,850円(前期比50円増)、2022年5月期も2,850円と高水準を予想している。
4. 「NEXT VISION」では分配金3,300円、資産規模3,000億円、AA格付、再エネ導入割合100%を目指す
同REITは、前中期目標で掲げた分配金2,750円の目標を前倒しで達成したことから、新中長期目標「NEXT VISION」を発表した。「NEXT VISION」では、分配金3,300円、資産規模3,000億円に加えて、新たにAA格付、再生エネルギー導入割合100%を目標に掲げた。分配金の目標達成に向けては、潤沢な内部留保の活用や、大きく残る賃料ギャップの回収を進める方針だ。資産規模拡大については、スポンサー・サポートによるパイプライン物件の開発・確保などにより、年間物件取得金額150~200億円を目指す。格付については、2021年11月期初にA+(ポジティブ)となったことから、今後も資産規模拡大と財務体質改善によるAA格への格上げを目指し、投資口需要の拡大と流動性向上を目指す。これらに加え、サステナビリティ(ESGの観点から社会・企業を持続させて行く考え方)向上に向けて、再生可能エネルギー電力の導入割合を100%の達成を目指す。同REITの投資口価格は、東証REIT指数を上回る上昇を続けているが、「NEXT VISION」の達成に向けた意欲的な取り組みによって、投資家の評価はさらに高まると弊社では見ている。
■Key Points
・東京都区部を中心とするオフィス
・レジデンス複合型REITで、平和不動産のサポートが大きな強み
・2021年5月期業績ではコロナ禍の影響は限定的で、おおむね期初予想通りの決算。分配金は11期連続でスポンサー変更後の最高値を更新
・2021年11月期は物件譲渡益の減少に伴い減益を見込むも、内部留保の活用により、分配金は2,850円(前期比50円増)を予想
・「NEXT VISION」では、分配金3,300円、資産規模3,000億円、AA格付、再生エネルギー導入割合100%を目指す。目標の達成に向けた意欲的な取り組みによって、投資家の評価はさらに高まると見る
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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