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マーケットコラム

上場インフラファンドについて/アイビー総研 関 大介

2017-10-13

関 大介

今回は、10月30日に上場予定のカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(証券コード9284)を含め、4銘柄となる日本の上場インフラファンド市場に関して記載します。

本連載はいわゆるJ-REITを対象としていますが、インフラファンドもJ-REITと同様に投信法に準拠し投資法人に投資する仕組みとなっています。捉え方によってはJ-REITの投資対象資産がインフラ資産になったものが、インフラファンドということもできます。


1. 上場インフラファンドとは?

インフラファンドにおけるインフラ資産とは、太陽光発電設備などの再生可能エネルギー資産や公共施設運営権(コンセッション)資産などを指します。
このような用途が、投資法人の投資対象として投信法や租税特別措置法の対象となったことでインフラファンドの上場が可能となりました。
2016年6月にタカラレーベン・インフラ投資法人(証券コード9281)が第1号の上場銘柄となりました。既に上場している3銘柄の保有資産は全て太陽光発電設備になっていますので、インフラファンドというよりは太陽光ファンドとなっています。


2. 分配金利回りの背景

インフラファンドは、J-REITと同様に利益の90%以上を分配することで実質的に法人税などが非課税となる導管性を持っています。従って高い分配金利回りという特色を持つ投資商品です。
具体的には、上場3銘柄の10月11日の予想分配金利回りが単純平均で6.6%と高い利回りとなっています(図表1参照)。
J-REITでも比較的高い利回りとなっている銘柄もありますが、インフラファンドの平均6.6%を超える利回りとなっている銘柄は上場59銘柄のうち2銘柄だけです。
またインフラファンド上場3銘柄の全てが高い利回りとなっている状況ですが、上場時の公募価格を上回っています。
利回りが高いということは、投資家がその銘柄に対して懸念を持っていることを示していると考えられます。
しかしインフラファンドは新しい投資商品であるため、投資家の懸念の一部が誤解によるものとなっている可能性があります。
最も誤解しやすい点は、太陽光発電の買取価格とインフラファンドの収益の関係です。


3. インフラファンドの収益性

太陽光発電による電力は、FIT制度(固定価格買取制度)により国が定めた金額で電力会社が買取ることになっています。この買取価格(税別)はFIT制度がスタートした2012年度の40円/1KWから2017年度の21円/1KWまで低下を続けています。また国は今後も順次買取価格を引き下げていく方針のようです。

一方でインフラファンドは、太陽光設備を運営会社(オペレーター)に賃貸し賃料を受け取る仕組みとなっています。運営会社は電力会社からの売電収入を基に賃料を支払います。投資家から見ればFIT制度による買取価格の下落が、実質的にはインフラファンドの賃料に悪影響を与える懸念を持ちやすくなっているのです。
しかしFIT制度は固定価格買取制度と名称が付けられている通り、価格は太陽光設備が設備認定を受けた年(※)から20年間固定されます。
インフラファンドのポートフォリオに組入れられている資産は、すでに固定された金額で長期間売電することが可能となっているのです。
つまりFIT制度で今後も買取額が下がったとしても、既存ポートフォリオの収入には影響を与える可能性はありません。

インフラファンドは、収入が太陽の日照に実質的には依存しているという投資商品とも言えます。日照時間が少なくなることで景気が悪化することがあっても、その逆はありません。つまりインフラファンドは、景気動向に左右されない極めて特異な投資商品です。
価格動向で見れば、上場投資商品であるため景気悪化局面では株式市場の下落などの影響を受ける可能性はあります。しかし収入への影響が極めて少ない点から、分散投資に適した投資商品と考えられます。


次回は、インフラファンド投資のメリットやデメリットについて記載する予定です。

なおインフラファンドに関しては、10月16日に「インフラファンド投資入門①~投資のための基礎知識~」という東証主催のセミナー
http://www.jpx.co.jp/learning/seminar-events/seminar/detail/d1/20171016.html
で筆者が講師をする予定です。有料のセミナーとなっていますが、時間のある方はご参加いただければ幸いです。

※2017年のFIT制度変更で事業認定なども必要となっている。

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